医学共通講義III 機能生物学入門

生体がどのようにして機能を発揮するかという根源的な問題の解決には、様々な角度からのアプローチを有機的に連結していくことが必要です。本講義では、中枢神経系の機能発現メカニズムを中心として、以下のテーマに関連した研究を紹介し、どこまで解明が進んでいて、今後どのような研究が必要なのかについて解説されます。記憶形成・想起メカニズム、記憶・学習の分子機構、嗅覚神経系の機能発現メカニズム、視覚受容の細胞メカニズム、シナプス伝達調節機構、グルタミン酸受容体の分子機構、細胞内カルシウムシグナル機構、発生・分化の分子機構など。

2019年度

2019年4月22日(月) 14:55~16:40 詳細

演者:筑波大学 松本正幸先生

場所:第6セミナー室 担当:細胞分子生理学 松崎政紀教授

2019年5月20日(月) 14:55~16:40 詳細

演者:新潟大学脳研究所 三國貴康 先生

場所:第6セミナー室 担当:神経生理学 狩野 方伸 教授

2019年6月10日(月) 14:55~16:40 詳細

演者:名古屋大学 宮田卓樹 先生

場所:第6セミナー室 担当:分子生物学 後藤 由季子 教授

2019年6月17日(月) 14:55~16:40 詳細

演者:脳科学神経科学研究センター(CBS) 風間北斗 先生

場所:第6セミナー室 担当:統合生理学 大木 研一 教授

2019年7月8日(月) 14:55~16:40 詳細

演者:北海道大学 田中真樹 先生

場所:第6セミナー室 担当:細胞分子生理学 松崎 政紀 教授

2019年9月9日(月) 14:55~16:40 詳細

演者:脳科学神経科学研究センター(CBS) 前川素子 先生

場所:第6セミナー室 担当:CBS 加藤忠史 教授

2019年10月28日(月) 14:55~16:40 詳細

演者:東京大学理学部 鈴木郁夫 先生

場所:第6セミナー室 担当:脳機能学 榎本 和生 教授

2019年11月25日(月) 14:55~16:40 詳細

演者:大阪大学 北澤茂 先生

場所:第6セミナー室 担当:薬品作用学 池谷 裕二 教授

2019年12月16日(月) 14:55~16:40 詳細

演者:大阪大学 橋本均 先生

場所:第6セミナー室 担当:細胞分子薬理学 廣瀬 謙造 教授

2020年1月27日(月) 14:55~16:40 詳細

演者:藤澤茂義 先生

名古屋大学・大学院医学系研究科 (細胞生物学分野)

場所:第6セミナー室 担当:システムズ薬理学 上田 泰己 教授


2020年1月27日(月) 14:55~16:40 第6セミナー室

理化学研究所 脳神経科学研究センター 藤澤茂義 先生

海馬における時間情報と空間情報の表現


海馬は、経験した出来事についての記憶である「エピソード記憶」の形成を担っていることが知られている。海馬がどのような神経回路メカニズムによってエピソード記憶を形成しているのかは未だ解明されていないが、海馬には空間における自らの位置を表現することのできる場所細胞が存在することをふまえて、空間情報・時間情報処理の観点から海馬の生理学的機能を明らかにする研究が進んでいる。本セミナーでは、当研究室において得られた最近の研究結果について詳細に議論する。一つ目の研究として、ラットが他者を観察しているときに、その観察対象である他者が空間のどこの場所にいるのかを認識するメカニズムを明らかにする研究を行い、その結果、海馬には他者の位置を表現する場所細胞が存在することを発見した。二つ目の研究として、海馬において非空間的な出来事の内容と順序の情報がどのように符号化されているかを明らかにする研究を行い、その結果、海馬には出来事を表現する「イベント細胞」が存在することを発見し、その出来事の順序情報が海馬シータ波(7-11Hz)上の発火位相により符号化されていることを解明した。これらの研究結果を通じて、海馬におけるエピソード記憶形成のメカニズムについて考察していく。

参考文献

1) Danjo T, Toyoizumi T, & Fujisawa S. (2018) Spatial representations of self and other in the hippocampus. Science, 359:213-218.

2) Terada S, Sakurai Y, Nakahara H, & Fujisawa S. (2017) Temporal and rate coding for discrete event sequences in the hippocampus. Neuron, 94:1248–62.

3) Norimoto H, Makino K, Gao M, Shikano Y, Okamoto K, Ishikawa T, Sasaki T, Hioki H, Fujisawa S, & Ikegaya Y. (2018) Hippocampal ripples down-regulate synapses. Science, 359:524-1527.


2019年12月15日(月) 14:55~16:40 第6セミナー室

大阪大学 薬学研究科 神経薬理学分野 橋本 均 先生

全脳イメージング装置の開発と脳疾患の分子機構研究

脳には機能が高度に局在し、またそれらが統合されているため、脳疾患の病態解明や脳の理解には、脳をシステムとして捉え、仮説に依らず、アンバイアスに観察・解析することが必要である。このために必要となる全脳(または広範囲の脳領域)の解析は、サブセルラーの解像度で許容時間内に撮影する装置が必要であるが、分解能と撮影速度のトレードオフに技術的な制約があった。そこで私たちは、細胞レベルからサブセルラーレベルで高速に全脳イメージングを行う装置を開発し、さらに構造や神経活動を個体群間で比較するメソッドを開発し、脳疾患に伴う変化や治療薬によるパターンの変化などを解析する研究を行ってきている。本セミナーでは、これらの研究の現状に加え、今後の脳研究への応用とその展望について紹介する。

参考文献

1)Seiriki K, Kasai A, Nakazawa T, Niu M, Naka Y, Tanuma M, Igarashi H, Yamaura K, Hayata-Takano A, Ago Y, Hashimoto H. Whole-brain block-face serial microscopy tomography at subcellular resolution using FAST. Nat Protoc. 2019 14: 1509-1529

2)Seiriki K, Kasai A, Hashimoto T, Schulze W, Niu M, Yamaguchi S, Nakazawa T, Inoue KI, Uezono S, Takada M, Naka Y, Igarashi H, Tanuma M, Waschek JA, Ago Y, Tanaka KF, Hayata-Takano A, Nagayasu K, Shintani N, Hashimoto R, Kunii Y, Hino M, Matsumoto J, Yabe H, Nagai T, Fujita K, Matsuda T, Takuma K, Baba A, Hashimoto H. High-speed and scalable whole-brain imaging in rodents and primates. Neuron 2017 94: 1085-1100


2019年11月25日(月) 14:55~16:40 第6セミナー室

大阪大学生命機能研究科脳神経工学講座 北澤 茂 先生

眼を動かしても世界が動かないのはなぜか

私たちの目は、一秒間に3回も急速な眼球運動(サッカード)を繰り返して外界の情報を取り入れています。網膜像は絶えず飛び続けていますが、眼前に広がる世界は微動だにしません。これは、本当にヘルムホルツやミッテルシュテートが提案した「サッカード抑制」だけで説明できるのでしょうか。実は、「説明できない」という明確な証拠が報告されています。では、どうやって。私たちは、脳が網膜像から「背景」を抽出して背景を基準とする座標系(背景座標系)を作り出して、網膜から最も離れた「楔前部」に安置しているおかげである、という仮説を立てて、その検証を進めています。背景座標系の存在を示す心理物理実験、楔前部に配置されていることを示唆する脳機能画像研究を紹介したのち、楔前部に「背景座標系ニューロン」が存在する証拠とその特徴を紹介します。

参考文献

1) 北澤 領域融合レビュー, 4, e012 (2015) DOI: 10.7875/leading.author.4.e012

2) Uchimura et al. Eur J Neurosci 42: 1651-1659 (2015).

3) Nishimura et al. J Neurophysiol 122: 1849-1860 (2019).


2019年10月28日(月) 14:55~16:40 第6セミナー室

東京大学理学部 鈴木郁夫 先生

ヒトらしい大脳皮質が形成される仕組み

言語などの高次認知機能はヒトという種を定義づける特徴であり、そうした脳機能は進化過程で著しく拡大・複雑化した大脳皮質の神経回路によりもたらされている。ヒトは最も近縁な類人猿よりも発達した大脳皮質を持つが、進化過程におけるどのような遺伝的、細胞生物学的変化により、大脳皮質の拡大や複雑化がもたらされたのかは良く理解されていない。近年、我々自身を含め、いくつかのグループが、ヒト大脳皮質の進化と関連する遺伝的変化や発生生物学的機構を報告している。一方で、ヒトが直近の進化過程で獲得した遺伝的変化は集団中に完全に固定されておらず、多くの多型が観察され、それらの中には神経発達疾患や神経変性疾患と関連するものが存在する。こうしたヒト固有遺伝的機構は、マウス等の動物モデルには存在しないため、ヒトにおける直接的な実験解析が必要となる。本セミナーでは、大脳皮質発達の進化と疾患に関連するヒト固有メカニズムを解説し、ヒト実験系における解析の手法についても紹介する。

参考文献

Ikuo K. Suzuki*. “Molecular drivers of human cerebral cortical evolution” Neuroscience Research, in press. (2019) https://doi.org/10.1016/j.neures.2019.05.007

Ikuo K. Suzuki, David Gacquer, Roxane Van Heurck, Devesh Kumar, Marta Wojno, Angéline Bilheu, Adèle Herpoel, Julian Chéron, Franck Polleux, Vincent Detours, and Pierre Vanderhaeghen*. “Hominin-specific NOTCH2NL genes expand human cortical neurogenesis through regulation of Delta/Notch interactions” Cell 173, 1370–1384 (2018) DOI: https://doi.org/10.1016/j.cell.2018.03.067

Ikuo K. Suzuki and Pierre Vanderhaeghen*. “Is this a brain which I see before me? Modeling human neural development with pluripotent stem cells.” Development, 15, 3138-3150. (2015) DOI: 10.1242/dev.120568. https://dev.biologists.org/content/142/18/3138


2019年9月9日(月) 14:55~16:40 第6セミナー室

理化学研究所 脳神経科学研究センター 前川素子先生

発達期の多価不飽和脂肪酸制限による統合失調症モデル動物における核内受容体の役割

統合失調症は、将来が嘱望される思春前後に好発し、その人たちの未来を奪うことから大きな社会問題であり続けている。また、統合失調症は罹患者数が多いことから(罹患率約1%)、発症メカニズムの理解が急務となっている。統合失調症の病態メカニズムについては、脳の発達期における様々な侵襲がこの疾患の発症脆弱性形成の基盤になる可能性が考えられてきた(「神経発達障害仮説」)。その一つとして、胎児期の低栄養状態が将来の発症リスクになり得ることを示唆する大規模疫学事象が知られており(Susseret al., 1996; St Clair et al., 2005)、また、統合失調症と栄養に関する臨床データとして多価不飽和脂肪酸との関連を示唆する知見が数多く報告されている(Hamazaki et al., 2016, 2015,他、文献多数)。この背景を踏まえ、栄養学的統合失調症モデル動物(胎児期に多価不飽和脂肪酸を欠乏状態にしたマウス)を作製して検討したところ、この動物では、統合失調症初期症状類似の行動変化が起こるのと同時に、大脳皮質前頭前野において、統合失調症死後脳の解析で報告されているのと類似の遺伝子発現変動が起こること、これらの変化の上流因子として核内受容体(多価不飽和脂肪酸を含む脂溶性の物質をリガンドとする転写因子)の存在が考えられることを見出した。この事象に関連して、現在様々なアプローチから分子メカニズムの検討を行っており、その結果についても概説する。

参考文献

Maekawa et al., Polyunsaturated fatty acid deficiency during neurodevelopment in mice models the prodromal state of schizophrenia through epigenetic changes in nuclear receptor genes. TranslPsychiatry. 7, e1229, 2017

Maekawa et al., Investigation of the fatty acid transporter-encoding genes SLC27A3 and SLC27A4 in autism. Sci Rep. 5: 16239. 2015

Maekawa et al., Utility of Scalp Hair Follicles as a Novel Source of Biomarker Genes for Psychiatric Illnesses. Biol Psychiatry. 78(2):116-25. 2015


2019年7月8日(月) 14:55~16:40 第6セミナー室

北海道大学 田中真樹先生

計時と予測の神経機構

信号待ちをしているとき、音楽を聴いているとき、 意識するかしないかに関わらず、私たちは 一日のうちに何度も時間を計り、タイミングを予測し、リズムに引き込まれている。 時間の情 報処理には前頭頭頂皮質と大脳基底核ループ、大脳小脳ループといった複数の大域ネットワー クが関与することが症例研究や機能画像研究によって示されているが、その詳細なメカニズム は明らかではない。私たちは、計時やタイミング予測を必要とする行動課題を訓練したサルを 用いて、その神経機構を調べている。本講演では、とくに大脳基底核や小脳がどのような関与 をしているのか、 これまでの知見を紹介する。


参考文献

Suzuki TW & Tanaka M (2019) Neural oscillations in the primate caudate nucleus correlate with different preparatory states for temporal production. Commun Biol 2: 102.

Kunimatsu J, Suzuki TW, Ohmae S & Tanaka M (2018) Different contributions of preparatory activity in the basal ganglia and cerebellum for self-timing. eLife 7: e35676.

Tanaka M (2006) Inactivation of the central thalamus delays self-timed saccades. Nat Neurosci 9: 20-22.


2019年6月17日(月) 14:55~16:40 第6セミナー室

脳科学神経科学研究センター(CBS) 風間北斗先生

感覚情報処理の神経回路メカニズム

  

感覚情報の脳内表現そのものの理解は進んできたが、脳内表現が神経ネットワークでどのように解読されることで行動が発現するかは未知の部分が多い。我々は、比較的少数の細胞から構成され、ほ乳類と類似した機能を発揮するショウジョウバエ成虫の脳を用いてこの問いに取り組んでいる。本セミナーでは、包括的イメージング、仮想空間における行動解析、光遺伝学と電気生理学による機能的回路の同定、及びモデリングのアプローチを組み合わせることで、嗅覚及び視覚に基づいた行動を支える情報処理とそのメカニズムに迫る試みを紹介する。

参考文献:

Badel et al., Neuron (2016)

Inada et al., Neuron (2017)

Shiozaki and Kazama, Nature Neuroscience (2017)

Mercier et al., Current Biology (2018)


2019年6月10日(月) 14:55~16:40 第6セミナー室

名古屋大学・大学院医学系研究科 (細胞生物学分野)宮田卓樹 先生

大脳皮質形成の生産物流とクラウドダイナミクス

  ヒトの知情意の座である大脳皮質の構造が正しく成立するには,胎生期に,充分な数・種類の細胞がつくられる必要がある.ヒト社会における工業的な「生産」活動は,それが大規模になればなるほど,材料の運び入れ,製品の運び出しなど「物流」の効率化を必要とする.各企業は浮沈をかけて「生産物流」の実践・研究に取り組んでいる.そんな様子は,脳の原基のなか,とくに最もおびただしい数の細胞がつくられる大脳皮質の建築現場にも,同様に,大規模な動き・流れを効率化する戦略が秘められているのではないかと想像させる.いっぽう,群集の殺到による事故を防ぐ,最適な避難路を探る,車の渋滞を防ぐなどの目的で「クラウドダイナミクス」が世の中を守り,進化させていることからは,細胞づくりの担い手である神経幹細胞にも,細胞密集性による混雑のリスクを克服し,安全な動き・流れを確保する工夫がありはしないかと想像させられる.

  本セミナーは,こうした視座のもと,「戦略・工夫」を探しに,胎生中期マウスの大脳皮質原基に対して,全細胞を一挙に観るイメージング,細胞外環境を操作する実験,力学的解析,数理シミュレーションなどを組み合わせて行なった最近の研究の結果を紹介する.(1)親(幹)細胞が分裂して2つの子細胞が生じるにあたっての形態的「親→子」ギフトを通じた子細胞たちの「時差出勤」,(2)細胞密集が生む組織弾性を活用したトランポリン風の細胞移動開始のしくみ,(3)煮物料理を成功に導く「落としぶた」のように,組織内の力学的バリア役(および細胞産生の守護役)という,うまい三つのしくみが見えてきた.

参考文献

Watanabe, Y., Kawaue, T., Miyata, T. Differentiating cells mechanically limit the interkinetic nuclear migration of progenitor cells to secure apical cytogenesis.Development145, dev162883, 2018.

Shinoda, T., Nagasaka, A., Inoue, Y., Higuchi, R., Minami, Y., Kato, K., Suzuki, M., Kondo, T., Kawaue, T., Saito, K., Ueno, N., Fukazawa, Y., Nagayama, M., Miura, T., Adachi, T., Miyata, T. Elasticity-based boosting of neuroepithelial nucleokinesis via indirect energy transfer from mother to daughter. PLOS Biol.16: e2004426, 2018

Okamoto, M., Namba, T., Shinoda, T., Kondo, T., Watanabe, T., Inoue, Y., Takeuchi, K., Enomoto, Y., Ota, K., Oda, K., Wada, Y., Sagou, K., Saito, K., Sakakibara, A., Kawaguchi, A., Nakajima, K., Adachi, T., Fujimori, T., Ueda, M. Hayashi, S., Kaibuchi, K., Miyata, T. TAG-1–assisted progenitor elongation streamlines nuclear migration to optimize subapical crowding. Nat. Neurosci. 16, 1556-1566, 2013


2019年5月20日(月) 14:55~16:40 第6セミナー室

新潟大学脳研究所 三國貴康 先生

生体脳でのゲノム編集技術の開発と応用

CRISPR-Casシステムによる迅速かつ正確なゲノム編集は、様々な生命科学分野で極めて有用な技術である。とりわけ、相同配向性修復(HDR)に基づくゲノム編集は、ゲノムに正確に配列を挿入し、除去し、置換したりするようなゲノムの思い通りの改変を可能にする。しかしながら、神経細胞のような非分裂細胞でHDRを誘導するのは難しいとされていたため、ゲノム編集技術の応用は神経科学分野では限られていた。私たちはこれまでに、「SLENDR法」および「vSLENDR法」という方法を開発し、哺乳類の生体脳でHDRによる正確なゲノム編集を効率良く行えるようにした。これらの方法は神経科学分野の様々な研究に応用可能であり、例えば、脳組織の1細胞において内在性タンパク質を高解像度かつハイスループットにイメージングすることができる。本セミナーでは、生体脳でのゲノム編集技術について説明し、これらの技術の今後の応用について議論する。

参考文献

Mikuni T*, Nishiyama J*, Sun Y, Kamasawa N, Yasuda R. High-throughput, high-resolution mapping of protein localization in mammalian brain by in vivogenome editing. Cell. 2016; 165(7):1803-17.

Nishiyama J*, Mikuni T*†, Yasuda R†. Virus-mediated genome editing via homology-directed repair in mitotic and postmitotic cells in mammalian brain. Neuron. 2017; 96(4):755-68.

Mikuni T. Genome editing-based approaches for imaging protein localization and dynamics in the mammalian brain. Neurosci Res. 2019; doi: 10.1016/j.neures.2019.04.007. (Review)

*Co-first authors, †Corresponding authors


2019年4月22日(月) 14:55~16:40 第6セミナー室

筑波大学 松本正幸 先生

ドーパミンニューロンの部位特異的な情報表現とその機能的意義

「ドーパミンは脳の中の快楽物質である」と耳にすることがある。この考え方は、ドーパミンを作り出すドーパミンニューロンが、報酬が得られたとき、あるいは報酬を得ることが予期されたときに活動を上昇させ、報酬の“価値”に関わる情報を伝達するというデータなどに由来する。しかし、ドーパミン神経系の変性が見られる疾患(たとえばパーキンソン病)では、運動機能障害や認知機能障害など、必ずしも報酬機能とは直接関係のない症状も多く見られる。我々の研究グループでは、様々な認知行動課題を実行中のサルのドーパミンニューロンから神経活動を記録し、ドーパミン関連薬物の脳局所注入がサルの行動に与える影響を解析することによって、快楽や報酬とは異なるドーパミンニューロンの側面について明らかにしてきた。本講義では、ドーパミンニューロンの部位特異的な情報表現とその機能的意義について考察したい。

参考文献

Ogasawara T, Nejime M, Takada M, Matsumoto M. Primate nigrostriatal dopamine system regulates saccadic response inhibition. Neuron, 100, p1513-1526, 2018

Matsumoto M, Takada M. Distinct representations of cognitive and motivational signals in midbrain dopamine neurons. Neuron, 79, p1011-1024, 2013

Matsumoto M, Hikosaka O. Two types of dopamine neuron distinctly convey positive and negative motivational signals. Nature, 459, p837-841, 2009



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