代表的文献

運動するシナプス


F1000 Recommendation

natureダイジェスト「ニューロン間の情報伝達は押す力でも引き起こされる!」

テルモ生命科学振興財団     生命科学DOKIDOKI研究室

スパインシナプスの増大には速い相は、シナプス前終末を押して開口放出を促進することを発見。その効果は20分ほど続いた。今回の研究からスパイン増大の力は平均0.5kg/cm2と求まった。この力は、平滑筋の収縮力と同じ。この機械力でスパインはスパイン増大の長期化のスペースを確保し、一方、短期的には増大効果をシナプス前部にで読み出されると考えられる。シナプス前部可塑性としては、シナプス特異性のある初めてのものであり、短期記憶への関与する可能性がある。


スパインシナプスの10年振りの総説。スパインは単なる記憶素子でなく、脳のアルゴリズムを体現している。例えば、ヘブ学習、強化学習、3因子学習、などの外因性動態は活動依存的可塑性と呼ばれる。これに対して、内因的動態(自発運動、揺らぎ)がスパインの体積分布や生成消滅に大きな影響を与え、膨大な新らしい記憶と少しの古い記憶が残る原因となり、個体の適応や創造性ということに寄与している。外因・内因的動態の双方が精神疾患に関係する。AIの大きな進展はシナプス動態から示唆される可能性がある。


ドーパミンD2受容体の役割をついに明らかにした。ドーパミン濃度の速い小さな現象も検出しスパイン増大に導き、弁別学習をする。この検出機構の障害が陽性症状と考えられる。      解説 ドーパミンD2受容体によるスパインと学習制御機序の解明        F1000 Recommendations


個体大脳新皮質でスパイン形態可塑性が起きることを初めて検証。増大は選択されたスパインにしか起きない。収縮は海馬スライス同様どのスパインにも起き、側方のスパインに広がる。


スパイン揺らぎは、再起型の神経回路においてHebb学習の暴走を防ぐ。一方、揺らぎによる記憶の劣化は自発的局所的なHebb学習があれば補償される。

マウスにうつ状態を誘発した後に抗うつ薬ケタミンを投与すると、前頭前野でスパインの生成が起き、うつ症状が改善するが、この際、ASプローブで新生スパインを消すと鬱症状が消去した。スパイン新生が抗うつ作用を持つ。         F1000 Recommendations


自閉症モデルマウス大脳皮質のスパイン運動を測定すると、遅い揺らぎが増大していることがわかった。平均堆積的な変化は少ないが、スパイン生成消滅に対する影響は大きい。スパイン揺らぎと自閉症の関係が示された。


統合失調症モデルマウス(CNBKO)の大脳皮質のスパイン体積を測定すると、小さいスパインの密度が少ないことがわかった。小さなスパインが作業記憶を担っているとう可能性を指示した。


頭部増大は刺激スパインに選択的に起きるが、その際にはコフィリンのリン酸化が起きストレス繊維様の構造ができている。これに対して、スパイン収縮ではコフィリンが脱リン酸化して広がり周囲のスパインを収縮させる。


個体において遅いスパインの変動は、自閉症モデル動物で亢進しているが、これに可塑性阻害剤を皮質に局所投与しても、変動が減少しないので、自閉症ではスパイン揺らぎが亢進している可能性が示された。


増大スパインを標識して、学習後にそれを光で消す頃により、記憶を選択的に消せる手法を確立した。解説 貯蔵された記憶を可視化・消去する新技術を開発            F1000 Recommendations


条件刺激1秒以内にドーパミンが上がるこれとが条件学習に必要で、AC1が関係することを明らかにした。報酬時間枠はよく説明され、頭部増大が情動記憶を担うこが明らかになった。解説 ドーパミンの脳内報酬作用機構を解明             F1000 Recommendations


GABAはスパイン収縮に必須で、スパイン収縮は側方に広がる。これは活性化コフィリンが側方に広がる事により、シナプス間の競合を起こす。 解説 記憶の整理              F1000 Recommendations


グルタミン酸uncagingを個体動物に適用して、スパイン形態機能連関が個体の大脳新皮質でも見られることを示した。


 スパイン可塑性の代表的総説 。


スパイン運動を日のオーダで観察することにより、自発的な揺らぎがあり大きさの分布を決めていること、を明らかにした。解 説:大脳シナプスの揺らぎと記憶



スパイン運動はスパイクタイミングで誘発した場合、タンパク質合成BDNF依存的となる。     F1000 Recommendations


スパインネックとNMDA受容体の機能。      F1000 Recommendations


スパイン頭部増大運動の発見。                      F1000 Recommendations


2光子アンケイジング法の開発とスパイン形態機能連関の発見。


細胞内高親和性Caバッファーのケイジドカルシウム試薬による特徴づけ。


線条体のグルタミン酸作動性介在神経の発見。この神経はその後、コリン作動性介在神経であることがわかる、 Higley et al. (2011) PLoS 6:e19155 。


原点、ネコの高次視覚野 (MT, Clare-Bishop) のユニット解析。


 

シナプス前部動態


開口放出誘発SNAREタンパク質の分子間FRETの初めての測定。解説 伝達物質放出・分泌の新しい可視化法の開発。


開口放出機構の総説、超高速開口放出以外では刺激後にSNARE複合化が起きる。刺激依存的SNARE複合化を考えることが大事。


解説記事 Solimena, M. & Speier, S. (2010) Shedding light on a complex matter. Cell Metabloism12:5-6. 

インスリン分泌では刺激後にSNARE複合化が起きる。刺激依存的SNARE複合化を考えることが大事。      F1000 Recommendations


複合的開口放出の顆粒内容物膨潤による促進を発見。開口放出に対する力学効果を初めて示唆。


2光子励起蛍光法を用いてインスリン開口放出を膵島組織内で可視化。開口放出は血管側だけでなく細胞間隙で起きる。融合細孔は初期から脂質でできている。


逐次開口放出の発見、2光子顕微鏡による可視化。


比較分泌生理学の提唱。


β細胞のインスリン分泌の細胞内ATPとcAMPへの依存性。 ATP-gS はATP同様の効果だったので、加水分解でなくリン酸化が関係し、インスリン分泌の細胞外グルコース細胞内ATP依存性にはcAMPによる開口放出の増強が関係。


Ca2+ 波動の原因がIP3の速い細胞内拡散とIP3受容体の不均一な分布にあることを解明(共焦点顕微鏡)。


外分泌腺の Ca2+ 波動の発見。Ca2+ 画像解析(SITカメラ)の先駆的仕事。


N型カルシウムチャネル (Cav2.2) を ω-conotoxin VIA が選択的に阻害することを発見。 Richard (Dick) W. Tsienと鋭く対立するも、現在では常識となっている。 

 

A電流(Kv1.4)の初めての単一チャネル記録。学位論文。



日本語総説

河西春郎 2010年 神経細胞の運動は記憶・認知の謎を解くか 「科学」(岩波書店) 80巻3号, p230-241 PDF file download

高橋倫子、岸本拓哉、大野光代、河西春郎 2010年 インスリン分泌におけるSNARE複合化、実験医学 第28巻 第9号 p1347-1351 羊土社