機能生物学セミナー(平成30年度)

医学共通講義III 機能生物学入門

生体がどのようにして機能を発揮するかという根源的な問題の解決には、様々な角度からのアプローチを有機的に連結していくことが必要です。本講義では、中枢神経系の機能発現メカニズムを中心として、以下のテーマに関連した研究を紹介し、どこまで解明が進んでいて、今後どのような研究が必要なのかについて解説されます。記憶形成・想起メカニズム、記憶・学習の分子機構、嗅覚神経系の機能発現メカニズム、視覚受容の細胞メカニズム、シナプス伝達調節機構、グルタミン酸受容体の分子機構、細胞内カルシウムシグナル機構、発生・分化の分子機構など。

過去の機能生物学セミナー

 

平成30年度

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2018年6月18日 14:55~16:40 第6セミナー室
発火タイミングに基づく匂い情報のコーディングメカニズム
九州大学大学院医学研究院・疾患情報研究分野  今井 猛 先生

脳が感覚刺激を知覚する際には、ノイズと擾乱に満ちた環境中の刺激の中から特定の情報だけを取り出さなければならない。我々はマウスにおいて、嗅覚1次中枢である嗅球の僧帽細胞に着目し、2光子カルシウムイメージング法を行うことで匂い情報のコーディングメカニズムの解明に取り組んだ。その結果、嗅球僧帽細胞においては、発火頻度ではなく、発火タイミング(発火位相)が匂いの「種類」のコーディングにおいて重要であることが明らかになった。更に、この発火位相コーディングは、嗅神経細胞における「機械刺激受容」の仕組みによって支えられていることも明らかになった。従って、嗅球はただ単に末梢の嗅神経細胞を僧帽細胞にリレーするための装置ではなく、ノイズや擾乱に満ちた末梢入力から匂いの種類の情報のみを時間的パターンへと変換する、極めて精緻な情報処理を行う回路であると考えられる。  我々の次なる目標は、こうした複雑な演算の神経回路基盤を明らかにすることである。このために、我々は光学顕微鏡を用いて神経回路構造を明らかにするための様々な手法の開発に取り組んでおり、それらについても紹介したい。

 


2018年5月14日 14:55~16:40 第6セミナー室
シナプス伝達の制御機構と病態機構の解明を目指して
自然科学研究機構・生理学研究所・分子細胞生理研究領域・生体膜研究部門 深田 正紀 先生

AMPA型グルタミン酸受容体(AMPA受容体)は、脳内の興奮性シナプス伝達の大部分を担っており、外界刺激に応答してAMPA受容体機能の強弱が変化することが脳高次機能の基盤となっている。一方、この調節機構が破綻すれば様々な脳疾患の原因となる。したがって、AMPA受容体の分子動態や機能を制御する機構はあらゆる脳機能・脳病態の根幹的分子基盤と捉えられる。興奮性ポストシナプスの主要な足場蛋白質PSD-95は、シナプス伝達の「場」をつくる構造的中核となるのみでなく、AMPA受容体をシナプスに捕捉しAMPA受容体機能発現に必須な役割を果たす。私共は、PSD-95の局在制御と蛋白質相互作用に着目して、AMPA受容体の制御機構を解析してきた。本セミナーでは、1)PSD-95パルミトイルサイクルと2)てんかん関連リガンド・受容体LGI1-ADAM22 という2つのシステムによるAMPA受容体制御機構と、その破綻により惹起される脳疾患の病態機構を紹介したい。

 


2018年4月16日 14:55~16:40 第6セミナー室
Brain circuits for triggering and overriding emotional memories
RIKEN CBS Josha Johansen 先生

Aversive experiences are powerful triggers for emotional memory formation and alter neural circuits to adaptively shape behavior. However, emotional responses need to be reduced when they are no longer appropriate to facilitate adaptive functioning. My lab studies the neural circuit and cell coding mechanisms which initiate learning and memory in response to aversive events and extinguish emotional responses when they are inappropriate. In this talk I will discuss recent work examining parallel neural circuits which trigger aversive associative learning and how feedback circuits regulate neural processing in these pathways to control the strength of fear memories. In addition, I will describe our recent discovery that distinct noradrenergic networks within the brainstem locus coeruleus either enhance fear memory formation or promote a switch from fear responding to behavioral flexibility, revealing a new framework for understanding noradrenaline circuit function. Together, these findings elucidate how neural circuit organization gives rise to neural coding and adaptive emotional behavior and suggest novel strategies for the treatment of anxiety disorders associated with aberrant fear and extinction learning.


Relevant literature:

Uematsu, A., et al. Modular Organization of the Brainstem Noradrenaline System Coordinates Opposing Learning States. Nature Neuroscience. 2017, 20(11) 1602-1611
Ozawa, T. et al. A feedback neural circuit for calibrating aversive memory strength. Nature Neuroscience 2017, 20(1): 90-97
Ozawa, T. & Johansen, J.P. Learning rules for aversive associative memory formation. Current Opinion in Neurobiology. 2018, 49: 148-157.

 

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