機能生物学セミナー(平成29年度)

医学共通講義III 機能生物学入門

生体がどのようにして機能を発揮するかという根源的な問題の解決には、様々な角度からのアプローチを有機的に連結していくことが必要です。本講義では、中枢神経系の機能発現メカニズムを中心として、以下のテーマに関連した研究を紹介し、どこまで解明が進んでいて、今後どのような研究が必要なのかについて解説されます。記憶形成・想起メカニズム、記憶・学習の分子機構、嗅覚神経系の機能発現メカニズム、視覚受容の細胞メカニズム、シナプス伝達調節機構、グルタミン酸受容体の分子機構、細胞内カルシウムシグナル機構、発生・分化の分子機構など。

過去の機能生物学セミナー

 

平成29年度

 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 

2017年7月3日 14:55~16:40 第6セミナー室
ゴールに向けた行動の評価と選択に関わる大脳基底核の神経回路機構
玉川大学 脳科学研究所 木村 實 先生

 

人間や動物は、将来の目標に向けて計画を立て、実際に行動した結果の良し悪しによってアプローチを改善しながら到達する。その過程には大脳基底核の神経回路が主要な役割を担うことを示唆する知見が蓄積している。一般的には、大脳皮質と視床から線条体に投射する行動、記憶、価値や注意などの情報が中脳ドーパミン細胞由来の報酬や動機づけ信号によって修飾を受けて、目的志向的・習慣的な行動信号が直接路と間接路を介して送りだされると解釈されている。近年神経回路基盤に関する多くの研究がなされているものの、論争も続いており、不明な点が多い。目標に向けた意志決定、行動選択と学習の過程に直接路と間接路が回路特異的な仕組みを担うと考え、検証するための研究を行った。トランスジェニックラットと光遺伝学によって線条体の直接路細胞と間接路細胞を同定し、報酬の大小に基づいて行動選択を行う際の活動を調べた。直接路細胞は行動選択の結果報酬を得て次に同じ選択をする時に活動し、間接路細胞は無報酬の結果次の選択を変更する時に強く活動した。光刺激によって直接路細胞の応答を促進・抑圧すると、同じ行動選択の確立が増大・低下した。間接路細胞の無報酬応答を増大させると、選択を変更する確率が増大した。これらの新しい知見は、線条体の2つの投射系が行動結果を異なる様式で評価し、相補的な役割によってより多くの報酬を得るための行動選択に貢献することを示す。ドーパミン系を中心に関連する他の研究と併せて、大脳基底核の神経回路機能を議論したい。



2017年5月8日 14:55~16:40 第6セミナー室
魚から心の仕組みを探る
理化学研究所 脳科学総合研究センター 岡本仁 先生

私たちの研究チームでは、ゼブラフィッシュを実験材料にして、ヒトを含む哺乳類と共通の基盤を持つ行動の神経回路機構を研究している。本講義では、以下の2つのテーマに関して話したい。

I: 魚の脳を使って意思決定の仕組みを調べる

哺乳類の脳では、扁桃体、大脳皮質•基底核•視床ループ、中脳や後脳のモノアミン細胞などが、行動制御プログラムの成立と変更に関与する。本講義では、極小な硬骨魚類の終脳にも、これらの脳部位に相当する領域が存在することを利用し、ゼブラフィッシュを実験材料として、神経活動の可視化や人為的操作を行うことで、情動と記憶に基づき行動を制御するための脳の神経回路の働きをどのように明らかにできるかを、論じたい。

II: 動物は御互い同士でなぜ闘うのか、どのように闘いをやめるのか?

動物は、適者生存による進化を促進するために、同種間で闘う。この闘いは、様式化されており、どちらかが降参する時点で攻撃が止む。ゼブラフィッシュを使った研究から、手綱核と脚間核を繋ぐ並行して走る2本の神経回路の中で、片方が、降参をし難くし、もう片方が、降参をし易くするように働くことが明らかになった。この神経経路は、魚から人間まで進化的に保存されているので、魚だけでなくヒトを含めた哺乳類での、闘争の制御にも深く関わっていると考えられている。私たちは最近、マウスを使った研究で、進化的に相同な神経回路が、闘争の制御に深く関わっていることが明らかにした。


2017年4月17日 14:55~16:40 第6セミナー室
匂いやフェロモンが引き起こす情動行動表出の脳神経基盤
東京大学農学部 東原和成 先生

生物は、仲間、敵、異性などのシグナルを、嗅覚神経系で正確に識別します。本セミナーでは、マウスをモデル生物として、同種あるいは異種間のコミニュケーションに使われる情報分子とそれらの受容体の同定、そして行動や情動変化が引き起こされるまでの脳神経回路の解明への取り組みについての話をします。

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